医療施設の改修や新設に際し、患者や就労者のクオリティー オブ ライフを向上する目的で、緑を中心とするランドスケープの概念を導入する必要があることから、メディカルランドスケープを提案した。入院患者に対するアンケートと医療記録の解析から、窓(開口部)の眺望景観に占める緑の視知覚量が多い場合に、医療効果が向上する傾向を明らかにすることができた。とりわけアフタ-ケア、リハビリテーション段階における患者に対しては、病室内からの緑の景観の眺望ばかりでなく、施設との接近性の高い、ベランダ、バルコニー、屋上、テラスなどの空間への緑の施設の要望が高く、こうした場所への緑の導入が、医療施設就労者からも要求が高いことを確認した。導入した緑の形態については、フォレスト、パーク、ガ-デン型のどれが効果的かについて調査した結果、治療中心型と療養中心型という施設の医療目的の違い、精神系、呼吸器系の疾患と内科系という疾患種類の違いによって、求められる緑の形態が異なることが判明した。概ね共通しているのは、ケア段階の多い医療施設の場合は、患者が就労者と供に参加できる、園芸活動型の緑が検討されており、一部の医療施設にあっては、いわゆる園芸療法の導入が試みられていた。イギリス、アメリカから専門の園芸療法士を招いて、園芸療法の可能性を検討している施設が増加している。施設内、施設外の緑と、地域の緑地空間を一体的に考慮しようとするいわゆるメディカル ランドスケープを形成する手法については、健常者との交流による医療効果と逆の衛生状態の維持との関係で、解決すべき問題が多いことが指摘できた。
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