研究概要 |
先ず、イネいもち病菌の分子遺伝学的な実験を行うに当たり必須となる、いもち病菌のPEG法による高効率な形質転換系を確立した.形質転換効率は、プラスミドpBF101を用い、プラストサイジンS耐性をマーカーにして検討した結果、約100-500transformants/u gDNAであった.次に、比較的形質転換効率が高く、しかも、イネ品種愛知旭に対して病原性の異なる菌株P-2b(レース303)および長87(レース031)を選定し、付着器または侵入菌糸を形成させたいもち病菌から、オリゴテックスを用いてmRNAを精製した後、逆転写酵素によってcDNAを合成した.このcDNAサンプルを鋳型としてランダムプライマーを用いたPCRによってDNAの増幅を行うことで、付着器形成段階および侵入菌糸形成段階のそれぞれに特異的なmRNAに対応するDNAバンドをアガロースゲル電気泳動によって検出するdifferential display法について技術的な検討を行なった.その結果、いくつかのDNA断片がバンドとして確認されるにいたったが、実験の再現性に未だ若干の問題を残している.このため、同時にPCRによって増幅されたDNA断片のクローニングを開始しており、今後、それらのすべてについて部分シーケンスを行い、ホモロジーサーチによって各々の機能の推定を行う予定である.また、イネいもち病感染イネと健全イネとで各々、発現している遺伝子の違いをここで確立したdifferential desplayを利用して検出を行う準備を進めている.得られたDNA断片をプローブとして、イネいもち病感染時に検出されるcDNAライブラリーからのスクリーニングにより,イネいもち病菌側の宿主特異性に関与するサプレッサー遺伝子またはイネ側の抵抗性遺伝子を単離したい.
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