研究概要 |
眠性の異なる家蚕の卵巣の発育タイムテーブルを作成するため、優性3眠蚕(M^3)と5眠蚕(M^5)の卵巣を光学顕微鏡で観察した。M^34齢0日の卵巣では予定卵母細胞(oocyte,oc)と栄養細胞(nurse cell,nc)の複合体が未整列の状態であったが(stage I)、4齢1日ではco-nc複合体が整列し始めた(stage III)。4齢2日では包卵被膜細胞(follicle cell,fc)がoc-nc複合体を取り囲み,oc-nc-fc複合体が形成された(stage IV)。その後順調に発育し、蛹0日(4齢脱皮後12日)では卵巣小管が卵巣外へ伸長し、最も発達したocは7個のnc集団とほぼ同じ大きさになった(stage V)。 M^55齢0日の卵巣小管の先端ではstage I、5齢1日ではstage IIIであった。5齢3日の卵巣小管の先端ではstage IVまで発達していた。oc-nc-fc複合体は5齢4〜5日(眠)では顕著な発育は見られなかったが、6齢脱皮後再び著しい発育を始めた。蛹0日(6齢脱皮後11日)に卵巣小管が卵巣外へ伸長し、最も発達したocはstage Vであった。 4眠蚕(+^<M4>)の卵巣と比較すると、+^<M4>4齢0日の卵巣ステージにはM^34齢0日およびM^55齢0日が相当する。M^3の4齢は終齢なので卵巣発育が進むが、+^<M4>はもう1回眠を経て、また、M^5は2回眠を経るのでM^3よりも卵巣発育が遅れる。幼虫の脱皮回数が多いほど卵巣の発育が遅れることが明らかになった。 PAS染色によって多糖類の分布を調べると、stage IIIから以後のoc細胞質で多量にしかも特異的に検出された。このことはoc自身がグリコーゲンを合成するか、それともnc/fcによって合成されたグリコーゲンがocに移送されるのか、どちらかまたは両方を反映していると予想される。
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