酸性土壌適応植物の栄養特性について明らかにするために、葉のそれぞれの要素含有率について、北大植物園と酸性土壌もしくは蛇紋岩土壌に生育する植物を綱・亜綱間で比較した。多量要素では、N、P、K含有率は土壌間差が小さく、Ca含有率は北大植物園に比べて酸性土壌もしくは蛇紋岩土壌で低く、Mg含有率は北大植物園に比べて酸性土壌で低く、蛇紋岩土壌で高い傾向にあった。微量要素では、Fe含有率は北大植物園に比べて酸性土壌もしくは蛇紋岩土壌で低く、Mn含有率は北大植物園に比べて酸性土壌もしくは蛇紋岩土壌で高い傾向にあった。Al含有率は北大植物園に比べて酸性土壌もしくは蛇紋岩土壌で一定の傾向を示さず、酸性土壌で可溶性のAlが多く、塩基性の土壌で可溶性のAlが少ないが、このような土壌の性質は葉のAl含有率に直接反映していなかった。以上のように、土壌養分よりは植物の特性に基づいて集積する要素(N、P、K、Al)や土壌養分を強く反映する要素(Ca、Mg、Fe、Mu)が認められた。 タイ半島部に酸性硫酸塩土壌、泥炭土壌、砂質ポドゾル性土、および塩類土壌が広く分布している。Melastoma malabathricum と Melaleuca cajuputi は低pH土壌(酸性硫酸塩および泥炭)に生育する優勢種である。M. malabathricum は多量のアルミニウム(Al)を葉、特に若い生長過程にある葉に集積することからAl集積植物と分類した。一方、M. cajuputi は地上部にAlを集積しないことからAl排除植物と分類した。両種とも低pH土壌によく適応した植物だが、Alに対しては異なる戦略をとっている。これらも植物を水耕栽培したところ、Al添加により生育はむしろ良くなり、特にリンの吸収が改善された。
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