動物の神経や筋肉と類似した化学的刺激による植物(オジギソウ)の応答としての電位変化を指標とし、インパルス発生物質を見い出すための簡便な生物試験法の開発・確立と、種々の化合物群や植物成分中のこのような物質探索を当初の目的としていたが、平成7年度までに(1)センダン科センダン(Melia azedarach L.)の実の抽出物からL-グルタミン酸ナトリウムをインパルス発生物質として単離・同定したが、市販の非天然型D-体はインパルスを生じないという興味ある結果が得られた。(2)マメ科ネムノキ(Albizzia julibrissin Durazz)の葉のメタノール抽出物から種々のクロマトグラフィーをおこない、2種の活性成分を得た。その内の1種は環状アミノ酸の可能性が考えられたが、現在その詳細な化学構造と種々の生理活性について検討中である。(3)スクリーニングの結果、38種の熱帯産植物メタノール抽出物のうち10種が強くインパルスを発生することがわかった。このように、物質探索に関しては、すでに本方法を用いて3種の活性成分を単離しており、構造についても明らかになりつつあることから、ある程度は達成できたと考えられる。一方試験法に関しては、その開発過程においてスクリーニングを想定したため、主として簡便性が中心であった。従って、インパルス発生物質を単離・構造決定した後の課題としての細胞レベルでの詳細な実験については、微小電極などを用いた別の試験法の開発が必要となる。
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