研究概要 |
卵黄膜外層に存在する高S‐S含有蛋白質・VMO‐IIを産卵直後の新鮮卵から高純度で純化し、全アミノ酸配列を決定することに成功し、構造上の特徴及び機能について下記の通り明らかにした。 一次構造と相同性:未処理及び還元カルボキシメチル化したVMO‐IIをそれぞれ3種のプロテアーゼを用いて断片化した各フラグメントをHPLCにより単離し、アミノ酸分析計及びシークエンサーを用い解析した結果、N末端をLeu、C末端をIleとする82残基の全アミノ酸配列を決定し、分子量は9,289と決定した。また、6個のS‐S結の中、3個の結合部位を決定した。既知蛋白質との相同性はヘビ毒や凝集素に30〜40%の相同性が認められ、VMO‐IIの機能性との関係に興味がもたれた。 高次構造の安定性:高感度示差熱量計分析及び円偏光二色性スペクルを用い、これまでの実験結果を踏まえ、一般的な条件下では熱変性が起こらないため、pHを変化させたり、尿素、グアニジン塩酸、還元剤を用いて測定したが、95℃までの加熱では変化せず、VMO‐IIは極めて熱安定性が高いことが明らかとなった。 SDSとの相互作用:VMO‐IIはメルカプトエタノール(ME)非存在下でのSDS電気泳動では、VMO‐II濃度に依存し、その移動度が著しく小さく、拡散したバンドを与えた。また、ME濃度(2〜10mM)によっても、一般の蛋白質には見られない挙動を示すことが明らかとなった。そこで、バイオゲルP‐6を用いたバッチ法で同じく塩基性蛋白質のリゾチームを比較対照とし、VMO‐IIに対するSDSの結合量を調べた結果、VMO‐IIは濃度に依存しSDSとの結合に疎外が起こることが分かった。しかし、100 mM ME存在下では疎外が起こらないことから、VMO‐IIに存在するS‐S結合によってSDSとの相互作用が阻止されることが判明した。 以上の実験結果から、VMO‐IIの際立って多いS‐S結合は単に構造上の安定に寄与しているだけでなく、生理機能性面での特異的相互作用の制御に関係していることが示唆された。
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