本年度はファームコントラクターの契約の実態を精査し、ゲーム理論によって農作業受委託契約成立のメカニズム、論理を明らかにすべく、実態調査及び理論的検討を行った。 実態調査は、十勝地域で成立された組織形態や規模の異なる民間作業請け負い会社3社を対象に、また、昭和46年農業機械の利用組合創立-昭和60年法人化(有限会社)により、地域に根ざして順調な発展をみた中島機械センター、最近、農協が主体となって大規模な補助事業を展開している鹿追農協営コントラクター組織を調査し、何が民間組織と異なるかを検討した。あわせ、府県の先進農作業受託組織の調査対象として、東北地域で進行中の21世紀型水田農業事業についての基礎資料収集などの予備調査を完了した。 理論的には、農作業受委託の契約関係のゲーム論モデル、情報の非対称性に着目して開発された、樋詰・修・長南のプロトタイプ・モデルについて、特に農作業受委託契約の双方の当事者が明確に判断できない「契約不可能条項」が存在するかどうかが中心的な検討課題となった。実態調査の知見としては「農業には『契約』はなじまぬ」といった利用農業の行動が支配的であり、「契約」についての認識が弱く、短期的な費用低減の立場が優先されていること、農協などの新事業も組合員の利益を優先し、利用料金を低く設定し、コントラクター部門の初年度からの赤字について将来的な見通しの甘さがあることが指摘された。このために民間会社の存立基盤はきわめて弱く、すでにコントラクターから撤退する民間企業が多いということが明らかにされた。これらは理論的には予想されたことであったが、民間コントラクターの発展にとってどのような条件が必要なのか、さらに検討中である。
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