研究概要 |
我が国では肉用牛群の省力な放牧管理が求められている。このためには個体識別(ID)しながら自動的に体重計測する技術を開発することが重要であり,今回,IDつき自動体重計測装置の技術開発とこの実用性について検討した。この結果は以下のとおりである。 1.慣行的分銅式体重計とIDつき自動体重計装置で体重計測作業性を比較したところ,後者は,牛が歩行しながら体重計測と個体識別が同時にでき,作業量が前者の1/8で極めて省力な作業性を確認した。 2.放牧地で水と濃厚飼料を誘因としたセンター施設に牛群を誘導するようにし,その途中に追込み柵,ベニヤ板張りの誘導柵,自動閉鎖する出入り口,自動ゲートと連動したIDつき自動体重装置を設置した。これらの施設はアングル鋼や鉄パイプ,コンクリートパネルなどで低コストに仕上がった。牛群には放牧地からこのセンター施設までの一巡を5〜6回強制的に追い回して馴致させた。 3.牛の後脚に付けたIDから自動体重計の床に埋め込んだアンテナで牛体番号を自動的に判読させると同時に自動体重計測を育成繁殖牛の日本短角種21頭と黒毛和種20頭について36日間行った。このように開発された装置で計測した体重データから,期間中のDGは日本短角種が0.97kg,黒毛和種が0.28kgであった。また、体重計測成功率は徐々に低下してきたが,90.1%であった。 4.流産牛のセンターへの進入順位は総じて流産する前まで低下傾向が認められるが,半強制的なセンターへの追い込みのため,順位変動は大きい。また,流産牛の流産する直前までの体重増加は緩やかであったが治療後の顕著な増体を示し,異常牛判読の示唆が得られた。
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