研究概要 |
今年度はウズラとマウスの11β-HSDの組織特異性に重点をおいて検討し、以下のような成果が得られた。まずさまざまな組織から得たミクロソーム分画(タンパク量100μg)を、1mM NAD^+またはNADP^+の存在下で、1.16×10^<-8>M[1,2,6,7-^3H]コルチコステロンとインキュベーションした。ステロイドを酢酸エチルで抽出し、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:CHCL_3:CH_3OH=95:5)によって[^3H]コルチコステロンと[^3H]11-デヒドロコルチコステロンを分離した。それぞれの放射活性を測定し、酵素活性を求めた。補酵素としてNAD^+を用いた場合をI型11β-HSD活性、NADP^+を用いた場合をII型11B-HSD活性とした。その結果ウズラの組織では主に腎臓と卵管で顕著なI型11β-HSD活性が検出された。発生段階を追って腎臓の11β-HSD活性を測定したところ、孵化前ではI型もII型も低い値であった。腎臓は体液の水分調節の器官として重要であるが、鳥類は卵という閉ざされた中で発生するために、水分調節における腎臓の役割が孵化前後で大きく異なっていると思われ、本酵素の活性の変化もこれを裏づけている。次に卵管の酵素活性を部位別に調べたところ、卵管峡部および膨大部で高く、子宮部で低いことがわかった。卵管膨大部は卵白を分泌する部位であり、卵管峡部は卵殻膜を分泌する部位である。子宮部は卵殻を形成する部位で水分を必要としないためにアルドステロンの標的器官ではないものと思われる。乳腺は血液中の水分を使って乳汁を分泌する器官である。そこでマウスの乳腺の本酵素の活性を測定したところ、I型よりもII型のほうが高い活性があり、ウズラの場合とは異なっているということがわかった。
|