白色腐朽菌からの水酸化ラジカルを生成する低分子の物質が、実際に木材分解に関係していることを明らかにするために、4種の供試菌を木粉添加培地とグルコース培地で培養し、2-keto-4-thiomethylbutyric acidからのエチレン生成量測定による一電子酸化活性と、生成した水酸化ラジカル量をジメチルスルホキシドを添加することによって測定した。またPhanerochaete chrysosporium(PHC)、Coriolus vericolor(COV)を木粉添加培地とグルコース培地で所定期間培養し、菌体外分泌物を抽出・濃縮後、アセトン沈殿を行った。その後セファデックスG-50によってゲルろ過し、UV吸収と一電子酸化活性の測定によって大・中・小分子量分画の3つに分けた。大・中分子量分画についてフェノールオキシダーゼ活性をもつ数種の酸酵活性を測定した。これらの結果から4種の白色腐朽において木粉添加培地でグルコース培地でより水酸化ラジカルの生成量が高かった。またPHCではマンガンペルオキシダーゼ、COVではペルオキシダーゼとラッカーゼが木粉添加培地で活性が高かった。水酸化ラジカル生成物質による一電子酸化活性は小分子分画で活性が高く、木粉培地では培養期間を通じて高い活性を保持した。また褐色腐朽菌の水酸化ラジカル生成物質に対するポリクローナル抗体を用いた免疫染色によって、木材細胞の内腔に存在する菌糸から、この物質が2次壁へと浸透していくことを明らかにした。以上の結果から、白色腐朽菌による木材分解には菌体外に分泌される低分子の水酸化ラジカル生成物質によって生成させる水酸化ラジカルが木材細胞壁を攻撃し、構成成分を変質させた後、分解酵素類が作用し、分解が進行するものと考えられる。さらにこの物質を精製するために、セファデックスG-25、XAD-2、DEAE-Affi-Gel-Blueゲルなどによるクロマトグラフィーを行い一部精製し、Tricine-SDSゲル電気泳動によって分離後、PVDF膜にブロットしシーケンサーによってアミノ酸配列を決定することを検討中である。
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