研究概要 |
線維芽細胞成長因子(FGF)は、中胚葉および神経性外胚葉由来の細胞群に対する栄養因子ファミリーである。なかでも酸性線維芽細胞成長因子(aFGF,FGF-1)は、一部の組織を除けば脳や網膜という中枢神経系に局在することから、神経系の栄養因子と考えられており、これまでaFGFの末梢組織における役割についてはほとんどわかっていなかった。しかし本研究によって、副腎の髄質においてaFGFのmRNAの発現が多く認められること、髄質のアドレナリン分泌細胞にaFGFが局在していることが明らかになった。さらにFGF1型受容体が副腎皮質に存在することも明らかとなった。aFGF投与によって副腎皮質ホルモンの分泌が亢進することから、aFGFは副腎皮質ホルモンの分泌調整という局所ホルモン的な働きを有している可能性を示唆する。こうした成果は、aFGFが中枢神経系の栄養因子であるという従来の概念を越えており、栄養因子のホルモン的機能という新しい学問的概念を提示するものである。研究成果は、6編の国際学術誌に論文発表した。最近、Progress in Neurobiology誌に自律神経系におけるFGFの意義に関する総説が発表されるなど、末梢神経・内分泌系におけるFGFの役割が注目を集め始めている。本研究は、こうした世界的レベルでの研究動向の先駆的役割を果たすことができたと考える。この研究成果を基に、栄養因子のホルモン様作用という新しい研究領域を更に発展できるよう、創造性をもって努力する所存である。
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