脾洞の壁を作っている内皮細胞は杆状をしており、細胞間には血球が通りぬけることのできる隙間がある。内皮細胞には、細胞自身が能動的に収縮し、細胞間接着装置を解離させ、形を変えることにより血球などの通過を調節する機構があるのではないかと推測される。血球通過の調節のメカニズムを解明するため、内皮細胞の微細構造、とりわけ内皮細胞間の接着装置と細胞内骨格の構造、アクチンフィラメントの分布と配列について、高分解能走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡を用いて調べた。次の結果が得られた。 1.通常の超薄切片の観察から、脾洞の内皮細胞の細胞間結合の主なものはadherens junctionであることが解った。その他、tight junctionも観察された。adheren junctionのjunctional membraneの細胞質側には電子密度の高いunder coatingがあり、それに細いfilamentsが付着していた。このfilamentsはmyosin sub-fragment1と反応して鏃構造を示すことから、actin filamentsであることが解った。また、adherens junctionに付着しているactin filamentsは、stress fibersのactin filamentsとも連続してた。 2.freeze-fracture法で作成したレプリカから、脾洞内皮細胞間に見られるtight junctionはfocal tight junctiondで、facia occludensとmacula occludensの二種類のタイプがあることが解った。 3.界面活性剤Triton X-100で細胞質内の可溶性タンパク質を洗い流した標品の割断面を高分解能走査型電子顕微鏡で観察すると、隣接する内皮細胞の細胞膜が平行に近接する部分があり、その細胞間隙には膜に直交するcross-bridge構造がみられた。また、その細胞質内では、膜に付着する線維が観察された。
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