従来の方法で培養した血管内皮細胞はコンフル-エントに達した後、細胞の重層化が進行し貧食能の発現が観察される。生体の正常な血管内皮細胞では見られないこのような変化を惹起する培養条件を基底膜側の物理化学的特性と管腔側(培養液)の性状の両面から検討した。 内皮細胞の上皮様機能・形態を維持するには、基底膜側はフィブリノネクチンやコラーゲンなどの特殊な接着タンパク質が必要である。基底膜のこのような構造を破壊し、加えて疎水的な条件下で培養すると速やかに間充組織様形態に変化する。またラミニンの様な特殊なタンパク質を基底膜側に誘導すると形態的分化は促進する。 培養液(管腔側)は従来用いられている199培地にFBS、ヘパリン、インシュリン、抗生物質の添加に加えコーチゾン(100ng/ml)ヒト血清アルブミン(5%)を添加することで分化転換をかなり良く阻止することができた。アルブミンの分化転換阻止効果は培養液中に形成されるフリーラディカルの除去作用に起因する可能性が大きい。また内皮細胞の増殖能を刺激するにはFGFではなくEGFの使用が望ましい。その理由はFGFはかなり強い貧食能誘導因子であることが明らかとなったからである。 内皮細胞の貧食様細胞への分化転換は形態的変化より機能変化が先行して観察されるので、貧食能を分化の指標にすることが望ましい。
|