細胞形態の変化をビデオ録画により経時的に観察し、その画像をデジタル化して解析する技術を確立し得た。さらに形態計測からroundness値(真円度)を求めることにより、形態変化を定性的なものから、定量的な解析を行うことに成功した。 ヒスタミン10μMは培養ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)の一過性で周辺部に限局した収縮を誘起し、またアクチンフィラメントの蛍光染色により、細胞質アクチンフィラメントの消失および周辺部への凝集が観察された。ヒスタミンはH_1受容体を介してプロテインカイネースC(PKC)の活性化を起こすことから、細胞内情報伝達系の形態変化との関わりが考えられる。 またPKC活性化剤のPMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)や蛋白フォスファターゼ阻害剤(オカダ酸、カリクリンA)やW-7などの細胞内情報伝達系に直接作用する薬物によっても、それぞれ特徴的な形態変気を誘起した。PMAは、異なった機構からなる二相性で非常に特徴的な形態変気を誘起した。第一相はPKC阻害剤で抑制されない形態変化で、投与約30分後におこる細胞の短縮の結果、松毬様集合形態を呈し、roundness値は増加した。第二相はPKC阻害剤で抑制される変化で、正常形態へ復帰後さらに12時間処理により誘起され、縦軸方向への伸展が生じるとともに、無処理細胞では観察されない流線形の集合パターンを示した。第二相ではroundness値は著明に減少し、細胞の長軸方向に縦走するアクチンフィラメントが観察された。
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