1.学童の運動処方に関する基礎的検討資料を得るために、学童と成人男子大学生(対照群)に異なる2つの強度の運動を負荷し、両者の体温調節反応の相違を比較・検討し、運動時の体温調節機能の発達過程を明かにするものである。特に体熱出納の面から定量的に学童と成人の運動時の体温調節能の状況について把握する。 2.対照群の実験は終了している。学童の基礎的実験は分析項目を一部変更したことから総ての項目については終了していない。しかし、概略的には成人と学童の運動時体温調節反応の実験成績を対比させて考察することが、可能となった。 今後は、追加実験を完了し、関連文献の省察を遂行すると共に、更に異なる産熱水準下における運動時の学童と成人の酸素摂取量一心拍数(Vo2-HR)の関係をも算出し、比較検討する。このことを基準として学童の望ましい運動強度を提案する。更にcore温の上昇に対する蒸発による放熱反応の関係からもアプローチする。 3.これまでの結果の大要を示すと以下の通りである。 (1)対照群と学童の運動時体温調節反応、特に発汗反応を比較すると、発汗量、発汗速度ともに、学童では、対照群より劣る。これは2つの異なる運動時に観察されている。 (2)運動前の深部体温の絶対値は学童で有意に高い。また、深部体温上昇速度に対する発汗の感受性は成人と比較して劣っている傾向にある。 (3)皮膚温の動向に関しては成人と学童おいて基本的に差異はないようである。 (4)体熱出納やVo2-HRの関係についてはまだ詳細な分析は行っていない。 (5)対照群(成人男子)のデータに関しては一部、国際会議にて発表する予定である。 今後は、上述した方法にしたがって詳細な分析、検討を行い、更に運動処方に関する基本的考察を加えることにする。
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