新規肝アセチル-CoA水解酵素の病態マーカー酵素としての基礎研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07807018
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 聖マリアンナ医科大学
• 研究代表者: 磯橋 文秀 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (20115992)
• キーワード: アセチルCoA水解酵素 / クロフィブレ-ド / 低温下失活酵素 / アセチルCoAハイドロレース / 分子解離会合 / 新酵素精製法 / ゲル濾過 / ATP感受性酵素

研究概要

抗高脂血薬剤であるクロヒブレート投与により、本報告者が発見した新規アセチルCoA水解酵素は、肝臓で著明な酵素誘導を受ける。又、本酵素は、室温(25〜30℃)でATP非存在下では、二量体(MW=135000)、ATP存在下では四量体(MW=242000)として存在するが、低温下(0〜4℃)では単量体に解離し、失活する。しかし、、一旦低温失活した本酵素も、高塩濃度もしくは、高酵素濃度にして加温すると活性を回復する。この解離会合の性質を利用して、電気泳動的に単一の酵素標品を得ることに成功した。
更に、病態マーカー酵素として血清サンプルでの測定法を開発中、大変興味ある現象と遭遇した。即ち、
1)血清インスリンが本酵素を著しく不活性化する。
2)血清アルブミンはインスリンとは逆に、本酵素活性を保護し、且つ活性回復促進効果がある。
3)IgGにもアルブミンより劣るが活性保護作用と、活性回復促進作用がみとめられた。
4)ペプチドのACTHにはインスリンのような不活性化作用は認められない。
そこで、本酵素のインスリン依存性不活性化のメカニズムを解析した。インスリンは濃度に依存して本酵素の失活単量体からの活性回復を抑制し、活性型への変換を阻止する。活性型酵素の1分以内の活性測定にはほとんど影響を与えないが、20〜30分では本酵素活性は著しく低下した。また、インスリンを添加して酵素サンプルを不活性化し、ゲルろ過法により遊離インスリンを除いても、酵素活性は回復しなかった。以上の結果より、病態マーカー酵素として血清サンプルを扱う場合、採血をインスリン濃度の高い食後を避け食前にする必要があると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Okamoto,K.: "Immunochemical Characterization of the ATP-Stimulated Glucocorticoid-Receptor-Translocation Promoter from Various Organs of Rat." J. Biochem.115・5. 862-867 (1994)
• [文献書誌] 磯橋文秀: "グルココルチコイドレセプターの核結合促進因子とPLPとの相互作用" ビタミン. 68・12. 760-761 (1994)
• [文献書誌] 磯橋文秀: "ラット肝細胞質アセチル-CoA水解酵素の新しい精製法の開発:パーオキシゾーム増殖剤による本酵素誘導と異なる温度下でのゲルろ過の利用." ビタミン. 69:12. 719-720 (1995)
• [文献書誌] Okamoto,K.: "Effect of Macromolecular-Translocation Inhibitor-III on Binding of Activated Glucocorticoid-Receptor Complex to Specific DNA." J. Biochem.119・5. 920-925 (1996)
• [文献書誌] Suematu,N.: "Evaluation of Various Purification Methods for Fluorescent Ectension Products of DNA Sequencing Reaction" St. Marianna Med. J.24・5. 557-565 (1996)
• [文献書誌] Suematu,N.: "Effects of Various Proteins or Peptides on Reactivation of Cold-Inactivated Acetyl-CoA Hydrolase from Ra Liver" St. Marianna Med. J.24・6(in press). (1997)
• [文献書誌] 中村正夫: "高齢者保健福祉研究/高齢者を対象とした院内感染・環境感染に関する研究" (福)川崎市社会福祉事業団(保健福祉研究センター), 24 (1994)
• [文献書誌] 中村正夫: "高齢者を対象とした院内感染・環境感染に関する研究" (福)川崎市社会福祉事業団(保健福祉研究センター), 32 (1995)