研究概要 |
我々はこれまで,主として白血病細胞株を用いて,薬剤耐性機序の解析を行なってきた。特にP糖蛋白の発現以外の耐性機構はまだそれ程研究が進んでいない。我々が樹立したAraC耐性白血病細胞株では一般に言われている酸素遺伝子には異常はなく,Ap-1等の核内蛋白の発現が増加していた。また,P糖蛋白を発現していない別の白血病細胞株でもAraC耐性のみならず,ADR,VINCHStin耐性株においてAp-1,Sp-1の発現増強があり,しかもこれらの発現阻害剤を用いることにより,その耐性を解除できた。一方,ヒト卵巣癌株とそのシスプラチン耐性株との比較においては,シスプラチン耐性株で核内における熱ショック蛋白の発現の増強があり,しかもp53発現も同時に見られた。これらの事実は,AP-1,SP-1のみならず,核内熱ショック蛋白等も種々の遺伝子発現に重要な役割を果たしていることを意味する。今後はさらに,普遍的にこれらの機内調節因子が働くのか,遺伝子発現のどの部位に関与するか解明したい。
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