ウイルスの病原性を考える上で、ウイルスと宿主細胞との相互作用を分子レベルで明らかにすることが重要である。ウイルスの病原性に関わる宿主因子(蛋白質)をどのように探し出すかが大きな問題であるが、本研究ではウイルス粒子に取り込まれる宿主蛋白質に着目した。ウイルスの粒子形成過程で偶然(意味なく)取り込まれる宿主蛋白質以外に、ウイルス成分との特異的な相互作用の結果取り込まれる宿主蛋白質があるのではないかと発想した。狂犬病ウイルスをモデルとして、そのウイルス粒子に取り込まれる宿主蛋白質を同定し、ウイルス成分との相互作用の有無を調べた。この結果、(1)常在性の熱ショック蛋白質70(HSC70)、(2)膜裏打ち骨格成分の重要成分のひとつであるERM、(3)免疫や細胞接着で重要な働きをしていると考えられているCD99のホモログがウイルスに取り込まれることが明らかとなった。ウイルス成分との関係解析から;(4)ERMはウイルスエンベロープ蛋白質と結合している。(5)CD99のホモログはウイルス膜蛋白質と同程度の効率ウイルス粒子に濃縮される。(6)同定したいづれの宿主蛋白質もウイルス感染にともない異常な分布を示すようになり、その分布はウイルスエンベロープ蛋白質と密接な関係にある。今後、ウイルスの病原性との関わりを調べる必要があるが、ウイルス粒子に取り込まれる宿主蛋白質を研究することはウイルス成分と相互作用(結合)する宿主因子を見つけ出すひとつの$有効な方法であると考えられる。
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