職業性肺繊維症の原因物質として、アスベスト、コバルトあるいは綿繊維などが挙げられる。これらの物質による肺繊維症の形成には、血管内皮細胞の障害によるフィブリンの沈着の重要性が指摘されている。フィブリンは繊維芽細胞の増殖を促進する細胞外マトリックスの一成分として、組織の繊維下に密接に関係している。ところで、アスベストは血管内皮細胞の障害を引き起こすことが病理学的には証明されているが、アスベストが内皮細胞の血液凝固系因子に与える影響、あるいはそれら因子の遺伝子発現のレベルに与える影響についてはほとんど検討されていない。そこで、平成7年度での本研究では、まずアスベストに暴露された人の血管内皮細胞において、そのDNA合成能およびタンパク質の合成能がどのように影響を受けるかを調べた。 結果:1)アスベストで処理した内皮細胞のタンパク質合成では72時間処理において最大の活性化が観察された。約140%までタンパク質合成が上昇した。 2)アスベストで処理した内皮細胞のDNA合成では24時間処理において最大の活性化が観察された。約150%までDNA合成が上昇した。 3)内皮細胞のタンパク質合成におけるアスベストの濃度の影響は、原液を1/200に希釈した場合にその活性化の最大の効果が見られた。 4)内皮細胞のDNA合成におけるアスベストの濃度の影響は、原液を1/100に希釈した場合にその活性化の最大の効果が見られた。
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