研究概要 |
特定の臓器で特異的に生合成される蛋白のmRNAを検出することによって、法医学的試料からその由来臓器を識別できるのではないかと考えた。先ず、肝臓では、我々の分離したLSAについてリシルエンドペプチダーゼ処理後、そのペプチド断片のアミノ酸配列を決定した。LSAのN末端シークエンスとペプチド断片のシークエンスをもとに3'、5'端のプライマーを作製し、肝臓のmRNAからPCR法によってプローブを合成した。次いで、このプローブを用いて肝臓のcDNAライブラリーを検索した。同時に、抗ヒトLSAマウスモノクローナル抗体を用いた抗体スクリーニングを行った。その結果、LSAの肝特異性は、コア蛋白に付随する糖鎖構造にあるものと考えられた。今後は、LSAの全cDNA配列の決定とその糖鎖構造による臓器特異性についての解明が必要であると思われた。さらに、肺に特異的に発現される蛋白を検索した結果、肺surfactant-associated protein(A-D),clara cell 10kDa proteinが肺に特異的に存在していることが確かめられたので、これらのcDNA配列をもとにプライマーを合成し、肺のmRNAからPCR法によってプローブを作製した。今後、これらのプローブを用いて、臓器特異的mRNAの発現を証明し、その法医学的応用法について検討したい。
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