研究課題/領域番号 |
07807054
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
油谷 浩幸 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (10202657)
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研究分担者 |
児玉 龍彦 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90170266)
郡司 俊秋 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
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キーワード | HCV / RNAポリメラーゼ / マイナス鎖RNA |
研究概要 |
1989年に米国カイロン社によりクローニングされたC型肝炎ウイルス(HCV)が日本における慢性肝疾患の約7割の原因ウイルスである事が判明し、本ウイルスの感染、増殖機構の解明は基礎的研究分野のみならず臨床分野でもきわめて重要である。我々は本ウイルスの増殖に必須なHCV由来RNAポリメラーゼの解析を行ってきた。(1)HCV感染患者血清を用いてHCVRNAポリメラーゼ(NS5b)領域をPCR法により増幅し、その遺伝子配列を決定した。PCR産物をサブクローニングした後、各検体につき少なくとも10クローンのシークエンスをしらべ,同一個体内におけるHCV株の遺伝子多様性を検討した。HCV感染患者血清中にはRNAポリメラーゼの遺伝子配列が均一なmajorcloneが存在し、こうしたウイルス株が活発に増殖しているHCVのクローンであると想像される。また同一患者内でもRNAポリメラーゼの遺伝子配列がheterogeniousなminor cloneが幾種類も存在する事がわかった。感染個体内におけるHCVのこうした遺伝的多様性が、HCV感染患者に対する抗ウイルス療法(IFN治療)への治療抵抗性のウイルス側の要因となっている事が想像される。 (2)肝臓癌を発症したHCV感染患者の癌部および非癌部の肝組織を用いてHCVの増殖中間体であるマイナス鎖RNAの遺伝子配列を決定する事により、これらの組織内で実際に増殖しているHCV株の種類や遺伝子多様性について検討した。HCV陽性肝癌患者の癌部および非癌部におけるマイナス鎖HCV RNAの遺伝子配列を調べたところ、異なるシークエンスが得られた。この結果は同一患者の肝臓内においても癌部および非癌部とでは異なるHCVウイルス株が増殖している事、および肝癌組織内においてもHCVは活発な増殖を続けている事を示している。 (3)HCVのNS5b領域をヒスチジンタグをN末側に接続させて大腸菌内で発現させ、ニッケルカラムにより精製した。 本領域を認識するモノクローナル抗体を用いてWestern blottingを行った結果3本のバンドを認め、最長のものは約75KDaでありほぼ全長のHCV RNAポリメラーゼ(P75)を精製する事に成功した。サブタイプの違う幾種類かのHCV株についてもそのNS5b領域を発現させ、ウイルス株の違いによるRNAポリメラーゼ領域の多様性についてWestern blottingにより検討中である。 (4)Rouse Sarcoma Virus(RSV)promotorの下流にNS5b領域を接続したコンストラクト(pRSV-NS5b)を作成し、このVectorを用いてトランスジェニックマウスへ導入した。その結果、Southern blottingによりNS5b領域がトランスジーンされている事が確認されたFounderが4系統樹立された。これらのFounderを用いてF1を作成し、さらにヘテロ接合体のF1の掛け合わせによりホモ接合体を3系統樹立した。
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