研究概要 |
われわれは肝細胞特異的にHGFが発現するトランスジェニックマウスを作製し(Hepatology 19:962-972,1994)、本マウスを用いてin vivoのHGFの抗腫瘍効果を検討している。具体的には、HGFトランスジェニックマウス(FBV)とヌードマウスのキメラマウスを用いての検討と、肝腫瘍発生を促進するTGFαやc-mycのトランスジェニックマウスとのダブルトランスジェニックマウスを用いての検討を進めている。 1、HGFトランスジェニックマウスでの肝細胞癌の転移能の検討 経門脈的に1X10^6個の肝癌を導入し、肝転移を作製した。HUH7細胞を用いた場合、肝転移率はヌードマウスでは80%に対し、HGF/ヌードでは20%へ減少した。Hep3B細胞、FaO細胞の検討では、それぞれヌードマウスで83%、80%に対し、HGF/ヌードでは40%、50%であった。総合するとヌードマウスで転移率81%に対し、HGF/ヌードでは35%と有意に(p<0、05)低下した。 2、HGFトランスジェニックマウスとTGFαトランスジェニックマウスのダブルトランスジェニックマウスでの肝腫瘍発生の検討 TGFαマウスでは、約15か月で肝腫瘍が60%で発生した。HGFマウスでは0%であった。両者のダブルトランスジェニックマウスでは33%へと減少した。 3、HGFトランスジェニックマウスとc-mycトランスジェニックマウスのダブルトランスジェニックマウスでの肝腫瘍発生の検討 16か月の検討では、c-mycトランスジェニックマウスは92%にアデノーマが発生し、58%に肝細胞癌が発生した。一方、HGF/c-mycのダブルトランスジェニックマウスではアデノーマは33%であり、肝細胞癌は0%と有意に肝腫瘍の発生が減少した。
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