研究概要 |
本研究においては、好塩基球や好酸球等の炎症細胞において表面受容体の活性化から細胞内Ca^<2+>の上昇、更に顆粒放出のいずれかの点でのrho蛋白の作用があることを実験的に証明することを目的とするものである。このうち顆粒放出に関しては、ラット好塩基球性白血病細胞株(RBL 2H3 cell line)の細胞膜を透過性にしたものにrho蛋白のactive mutantを適用した場合Ca^<2+>やGTP-γ-S適用により顆粒放出が増大すると最近報告された(L.S.Price,et al.,Current・Biology,1995,5:69-73)。このことは、rho蛋白が顆粒放出に関与している可能性を示唆する。しかしながら、この報告は、生理的条件下でのrho蛋白の役割を明らかにしたわけではない。そもそも好塩基球などのIgEによる顆粒放出過程の開始は、細胞表面膜の受容体の凝集から始まる。この過程には細胞骨格が関与していると考えられrho蛋白がこの過程を制御している可能性が十分にある。そしてこの過程が進まないとそれ以後の反応が進まないと考えられるのでこの過程は生理的に重要な過程と考えられる。この過程は、IgE受容体のみならず、炎症細胞におけるIgG受容体においても生ずると考えられている。さらにこの問題を検討するにはRBL 2H3 cell lineより人の細胞の方がいろいろな面で都合がよいと考えられる。そこで現在、人の単球を用いてこの問題を検討中である。すなわち人単球よりRNAを抽出しRT-PCR法によりrho蛋白のmRNAが存在しているかどうかを検討しており、またrho蛋白のmRNAのantisense用のoligonucleotideを設計中である。IgG受容体を抗IgG受容体抗体を付着させさらに、それに対する抗体で刺激しそれに伴って生じる受容体の凝集は共焦点顕微鏡で解析中である。受容体の凝集後の信号伝達の程度については、細胞内Ca^<2+>の上昇または、Na^+-H^+ exchangerによる細胞内pH変化のいずれかの方法を用いるかについて検討を加えている。
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