結核菌初感染或いはBCGワクチン免疫によって誘導される結核免疫の維持が、組織内に定着したL型結核菌に担われるという仮説を実証するために、マウス抗酸菌感染症モデルを用いて本研究を実施した。 Bcg'・Bcg'マウス共に10^6BCG静脈内感染後2ケ月目迄は肺・脾・肝からBCG生菌が回収された。それ以降はBcg'マウスでは肺及びRES系からの生菌は回収されず、Bcg'マウスでは持続的に6ケ月目迄生菌が回収された。Bcg'マウスでは感染4ケ月目に、Bcg'マウスでは感染5ケ月目から1ケ月間抗結核剤治療を行ない生菌が回収されない状態にした後、それぞれ肺及び所属リンパ節を摘出した。BCG特異的プライマー及びプローブを用いて肺及びリンパ節の凍結切片をもとにin situ PCRを実施し、non-RI(DIG)法によるdetection systemでBCG由来DNAを検出したところ両マウスで肺肉芽近辺及び所属リンパ節においてBCG genomeの一部を検出し得た。densitom eterにてDIG量を定量比較したところ、両組織においてBcg'マウスでより強いDIG量を確認した。 in vitroでBCGを感染させたマウスマクロファージ(J774、Bcg'由来)を、BCG抗原特異的TH_1細胞(BCG感染1ケ月後のBcg'マウス脾内T細胞よりcloning)のBCG抗原刺激下に産生される培養上清と共に培養することで、培養開始5日目以降に平均35%の頻度で感染BCGがL型に変異することを確認した。抗IFN-γモノクロン抗体存在下で同培養を実施したところ、BCGのL型菌への変異が抗体濃度依存性に抑制された。これらのことから、BCGの生体内でのL型菌への変異には抗原特異的に産生されるIFN-γが関与していると考えられた。またBcg'マウスでは親型BCGの消失にともなって一部はL型菌に変異し組織内に定着していることが確認された。
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