結核菌初感染或いはBCG免疫によって誘導される結核免疫の維持が、肺組織内に定着したL型結核菌に担われると言う仮説を実証するために、マウスBCG感染モデルを用いて本研究を実施し、以下の事実を明らかにした。 (1)Bcg^rマウスでは感染60日目以後に、Bcg^sマウスではイソニアジット(INH)治療によって、肺内にL型菌が定着する。 (2)in situ PCR法により、肺内肉芽形成部位とリンパ組織にL型菌定着を認め、肉芽部位に一致してより強い定着が認められた。 (3)マクロファージ内BCGのL型菌へのトランスホームにはINF-γが関与している。 (4)L型BCGによる免疫でBcg^sマウスにBCG抵抗性が付与され、またL型BCG定着Bcg^sマウスはBCG再感染に免疫が成立していた。 (5)L型BCG定着マウスをエストロゲン或いはコンビナイトTNF-αを複数回投与することにより、L型BCGの親株BCGへの復帰が認められた。親株への復帰に伴って、TNF-α、TGF-βのサイトカインmRNAの強い発現が認められた。 (6)L型BCG定着マウスはBCG再感染に抵抗性を示すが、この時、IL-2、IL-12及びIFN-γのmRNAの強い発現が認められたが、対照マウスではこれらのRNAの発現は極めて低かった。 以上の事実から、L型BCGの定着にはIFN-γが関与し、L型定着マウスにおける再燃には、TNF-α及びTGF-βが関与していると考えられた。TNF-α・TGF-β両サイトカイン発現は宿主栄養状態の低下、HIV感染やステロイド投与で促進されることから、ヒトにおいては初感染で得た結核免疫が宿主因子の低下により、L型結核菌が親株へ復帰することで再燃が生じるものと推察された。
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