平成7年度の研究で、ヒト肝由来λgt11 CDNAライブラリーを抗HIV1p17抗体を用いて20万個のクローンをスクリーニングし、1個の陽性クローンを得た。この塩基配列を決定した結果、5′端から58番目の塩基でストップコドンが現われ、その後も多数のストップコドンが出現した。従って、ヒト肝CDNAライブラリーを用いて上記の塩基配列をプライマーにして5′方向にPCR法により伸長させた。しかし、目的とするCDNAは伸長されず、それとは別にDrosophila traslocation protein 1(Dtrp1)に類似の新しいヒト蛋白質(アミノ酸残基399個)が明らかとなった。 次に、抗HIV-1p17抗体に反応する蛋白質は脳より肝に多いことを明らかにしていたので、ヒト肝から抽出・精製を試みた。硫安沈殿→ゲルろ過→陰イオン交換クロマトグラフィー→2次元電気泳動法を用いて抗体に反応する単一スポットに精製した。そして、次のアミノ酸配列を得た:KHSLPDLPYOYGALEPHINAQIMQLHHSKHHAAYVNNLNV。この配列はsuperoxide dismutase-2(SOD-2)のN端配列に完全に一致した。ホモロジーサーチの結果、SOD-2とHIV-1p17にはLQPALKという配列が共通に存在し、これがエピトープになっている可能性が考えられた。 アルツハイマー病脳の海馬λgt11 CDNAライブラリーから30万個のクローンをスクリーニングした結果では、5′端に未知の配列、3′端にクロモグラニンBに似た配列をもつ新しい蛋白質を見い出すことができた。現在、5′端の未知の新しい配列に対する抗体を作成中である。
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