ヒト免疫不全ウイルスの構造蛋白質p17(HIV-1p17)に対する単クローン抗体が交差反応するヒト蛋白質を同定するため、ヒト剖検臓器より目的の蛋白質の抽出・精製、およびcDNA cloningを行い、以下の新知見を得た。 1.HIV-1p17に対する単クローン抗体は複数のヒト蛋白質と交差反応した。 2.抗HIV-1p17抗体に反応する蛋白質は脳より肝に多いことを明らかにしていたので、ヒト肝から抽出・精製を試みた。硫安沈澱→ゲル濾過→陰イオン交換クロマトグラフィー→2次元電気泳動法を用いて、抗体に反応する蛋白質を単一スポットに精製した。そして、次のアミノ酸配列を得た:KHSLPDLPYDYGALEPHINAQIMQLHHSKHHAAYVNNLNV。この配列はsuperoxide dismutase-2(SOD-2)のN端配列に完全に一致した。ホモロジーサーチの結果、SOD-2とHIV-1p17にはLQPALKという配列が共通に存在し、これがエピトープになっている可能性が考えられた。 3.ヒト肝由来λgt11cDNAライブラリーを抗HIV-1p17抗体を用いて20万個のクローンをスクリーニングし、1個の陽性クローンを得た。この塩基配列を決定した結果、5′端から58番目の塩基でストップコドンが現われ、その後も多数のストップコドンが出現した。従って、ヒト肝cDNAライブラリーを用いて上記の塩基配列をプライマーにして5′方向にPCR法により伸長させた。そして、Drosophila traslocation protein 1(Dtrp 1)に類似の新しいヒト小胞体蛋白質(アミノ酸残基399個)を発見した。 4.アルツハイマー病脳の海馬λgt11cDNAライブラリーから30万個のクローンをスクリーニングした結果では、5′端に未知の配列、3′端にクロモグラニンBに似た配列をもつ新しい蛋白質を見いだすことができた。現在、5′端の未知の新しい配列に対する抗体を作成中である。
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