ポジトロン断層法(PET)により一般に測定されている血流、ブドウ糖や酸素代謝などは局所に細胞体を有する(節後)ニューロンの機能を反映するのに対し、局所にシナプスを形成する入力系、即ち、節前ニューロンの機能を評価するアデノシンA1受容体を測定するPETトレーサの開発を目的として、以下の成果を得た。 [^<11>C]KF15372の合成:^<11>CO_2より標識前駆体として[^<11>C]C_3H_7Iを合成し、目的化合物の脱プロピル体をアルキル化してアデノシンA1アンタゴニスト[^<11>C]KF15372を合成した。 マウスやラットにおける組織摘出法とオートラジオグラフィー(ARG)により、1)[^<11>C]KF15372投与後の脳局所への分布はアデノシンA1受容体の分布とよく一致した、2)その局所分布はアデノシンA1アンタゴニスト負荷により失われ、A2アンタゴニストにより影響されなかった、3)HPLC分析組織放射能の化学形は大部分[^<11>C]KF15372そのものであった。これらの結果は、[^<11>C]KF15372がアデノシンA1受容体に特異的に結合していること示している。また、サルにおいても、[^<11>C]KF15372の動態を高分解脳動物用PETカメラを用いた経時的に測定することにより、脳A1受容体への特異的結合を評価することができた。更に、ラットの眼摘出モデルにおいて、A1受容体欠損をARGにより画像化することができた。 以上の結果は、[^<11>C]KF15372がPETによる脳アデノシンA1受容体を測定するための有望な放射性薬剤となることを明らかにした。
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