研究概要 |
リポ蛋白(a)[Lp(a)]はLDL様粒子がアポリポ蛋白(a)[apo(a)]とジスルフィド結合した構造を有し、その血中濃度の増加は冠動脈硬化、脳動脈硬化などの動脈硬化発症の独立した危険因子であることが知られている。しかし、血中Lp(a)濃度を特異的に、かつ十分に低下させうる薬剤はまだない。さらに、Lp(a)の血中濃度は肝でのapo(a)産生量に保存していることも明らかになっている。そこで、我々はルシフェラーゼアッセイシステムを用いてこれまでに知られているニコチン酸、ネオマイシンなどのLp(a)低下作用機構の解明と、apo(a)の転写活性を抑制する薬剤、生理活性物質のスクリーニングを行った。 apo(a)の翻訳開始部位の-4から-445番目に一致する領域(Wade D.P.,et Al.,PNAS 90:1369,1993)をトランスフェラーゼベクターであるpGL2-Basic (Promega社)に挿入し、転写解析プラスミドpGL2/Apo/-445を作製した。トタンスフェクション効率をモニターするベクターであるpSV-β-galactosidase (Promega社)の発現が甲状腺ホルモンやダナゾールにより影響を受けることが確認されたため、総細胞蛋白量を用いてトランスフェクション効率を標準化した。その結果、ニコチン酸が1、10、100μg/mlの各終濃度でapo(a)の転写活性をそれぞれ、13.2、14.8、32.0%低下させることを見出した。一方、甲状腺ホルモンは終濃度10^<-8>、10^<-7>、10^<-6>Mで、またエストラジオールも10^<-8>、10^<-7>、10^<-6>Mにおいてapo(a)の転写活性にはほとんど影響を与えなかった。さらに、IL-6は10ng/mlの終濃度でapo(a)の転写を2.5倍高めた。また、ビタミンAの誘導体であるall-transretinoic acid(ATRA)はapo(a)の転写を2倍高めることも見出している。現在、これらの薬剤のapo(a)の転写に及ぼす機序について詳細な解析を行っている。
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