平成7年度は、ビ-グル犬4頭で、微小冠動脈枝造影とマイクロスフェア-充填法による微小血管容積分布評価を併用する実験プロトコールを行なった。4頭中2頭では、麻酔し、開胸した後、第二および第三対角枝とさらにそれから分岐する心筋貫通枝の選択的造影をおこなった。他の2頭では、造影後、Br(ブロム)をラベルした非放射性マイクロスフェア-(直径15μm)1-5*10^8個をバイパス路内に注入し、心筋貫通枝以下の冠微小血管枝を非放射性マイクロスフェア-で充填した。他の2頭では直径60μmのZr(ジルコニウム)をラベルした非放射性マイクロスフェア-を注入した。心臓をホルマリン液中で固定し、左室前壁心筋を厚さ1mm毎に切り出し、X線蛍光強度の2次元マッピングを行なった。蛍光X線の相対強度分布からコンピューター上で2次元画像を再構築し、微小冠血管枝造影所見と比較した。両者はよく一致した。一部の標本から厚さ20μmの組織切片を作成し、顕微鏡写真の撮影と蛍光X線強度の2次元マッピングを行い、2次元画像と顕微鏡写真を比較し、両者がよく一致することを確認した。 平成8年度は、ビ-グル犬5頭を用いて、平成7年度と同様の動物実験を行った。本年度はX線蛍光分析法の解像度を高め(ビームサイズ10μm*10μm)、前年度よりも微小な領域内(1mm*1mm)での血管容積の分布を検討した。前年度と同様に、局所の蛍光X線強度を局所重量(コンプトン散乱の強度で代用する)と励起X線強度(弾性散乱強度)で補正し、平均値に対する蛍光X線の相対強度を算出した。蛍光X線の相対強度分布からコンピューター上で2次元画像を再構築し、微小冠血管枝造影所見と比較した。一部の標本では厚さ20μmの組織切片を作成し、顕微鏡写真を撮影した後に、蛍光X線強度の2次元マッピングを行い、その2次元画像と顕微鏡写真を比較した。次に、心筋標本ごとに補正した蛍光X線の相対強度のヒストグラムを心筋内層、中層、外層ごとに作成し、直系15μm以上の微小血管容積の分布と、直径60μm以上の微小血管容積の分布が、心外膜側と心内膜側のそれぞれの微小領域内(1mm*1mm)どのように異なっているかを比較した。
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