研究概要 |
従来の視察的脳波の検討ではてんかん発作を惹起する棘波と、臨床発作を示さない棘波といわゆる潜在性てんかん波と鑑別することは不可能であった。我々はてんかん原性を示す棘波とそうでない棘波を動的脳電図による形態分析所見から客観的に鑑別し得るのではないかと考え、以下の対象を選択し、これらの群にみられる棘波を動的脳電図法を用いて、詳細に検討した。研究対象は年齢関連性に小児期に発症し予後良好な中心側頭部に棘波を有する良性小児てんかん(BCECS)の患児をてんかん群,これと同じ部位に同様の棘波すなわちローランド棘波を示しながら一度も発作の既往のない患児すなわち潜在性てんかんの患児を非てんかん群、また少数回の熱誠癒攣や一回のみの無熱発作後に、長期間ローランド棘波を呈している患児を中間群として検討した。その結果、てんかん群では電位分布の陰性極と陽性極の反転が棘波の起始部から陰性頂点の間に継時的に観察されるのに対し、非てんかん群ではこの電位分布の変化が見られず、てんかん群とと非てんかん群では、有意差をもって動的脳電図のパターンが異なった。このてんかん群に特異的な動的脳電図のパターンは、棘波の加算によって明かにされる主要陰性頂点に先行する小さい陽性棘波の存在によることが判明した。そしててんかん群でのこの特異な先行する陽性電位の発生源は双極子分析で、主要陰性頂点の発生源の近傍に推定されたため、これとてんかん原性の有無との関連が示唆された。 さら中間群は非てんかん群と同様の脳電図のパターンが多く、てんかん原性が乏しいものが多く含まれると考えられた。 以上から動的脳電図により、てんかん原性の程度を判定しうると結論し、この結果は今後、潜在性てんかんや熱性癒攣の治療方針決定に有用であると考えた。
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