超高速磁気標識法MRI(Magnetic Resonance lmaging)は、筋収縮直前に特殊なパルスを印加し筋収縮持続中(約1秒間)に信号収集を行い、得られるMR画像上で十数本の輝線(以下tag)が各筋組織の移動量に応じて偏位、変形して描出される方法である。この新手法を用いることにより、筋肉内外での収縮伸展の移動量が、非侵襲的かつ定量的に初めて画像化可能となった。本年度ではこの磁気標識MRI法の四肢用調整と環境整備に重点をおいた。まず磁気標識MRI法を四肢の筋群測定用に調整最適化するために、1)ファントム実験によりtagの移動距離や変形が、その断面での骨格筋の収縮伸展量に正確に反映されるかの検定を行った。2)大腿、下腿に各々関節運動可能な専用固定装具を作成し、個別に最適なパルス系列を含む撮像法を決定した。3)二次元多断層像や三次元画像を処理するために、MR装置と三次元画像解析機能を有するワークステーションへの接続とその操作環境を整備した。以上の初期設定を行いこれまでに健常人被検者十数人の測定を行った。 本法により生理的な筋肉の収縮状態の可視化が初めて可能となった。例えば大腿四頭筋の等張性収縮において、単一筋束内では筋束長軸に沿った筋中央部と筋腱移行部では後者の移動変移が大であり、筋束中心部と筋膜直下の周辺筋組織とでは中央部分の収縮がより優位であった。更に受動的伸展を含む周囲筋群との強調運動も定量的画像として示された。
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