放射線治療に伴う皮膚炎に対して経口性抗アレルギー剤であるアゼラスチンの有用性を臨床的に経験している。本研究では、放射線皮膚炎に対するアゼラスチンの効果とともに、放射線の抗腫瘍効果に対する修飾作用について実験的に検討した。実験にはC3Hマウスを用い、アゼラスチンは経口投与とした。放射線照射の1週前より投与を開始する投与I群、照射直後より開始する投与II群および対照群を設け、各々を3群に分け右後肢に20、40、60Gyを1回照射した。照射後、経時的に皮膚所見をスコア化し、効果を判定した。また、組織学的には、40Gy照射後の皮膚組織のHE染色所見を経時的に観察し、投与群と対照群を比較した。急性放射線皮膚炎所見は対照群においては60Gy照射にて、4週目に湿性落屑を認め、それ以降では自然軽快した。40Gy照射では5週目に完全脱毛に達したが、湿性落屑は認めなかった。投与群にでは60Gy照射でも湿性落屑を認めず、40Gy照射でも完全脱毛にまで至らないものが多かった。スコアによる比較でも各照射線量において投与群は有意差をもって低値を示した。組織学的には投与群の炎症細胞浸潤が軽度である傾向を認めたが、経時的変化には有意差を指摘できなかった。更に、放射線の抗腫瘍効果に対するアゼラスチンの修飾効果を見るため、腫瘍細胞(SCC VII)を移植し、照射後腫瘍径を計測し、投与群と対照群の腫瘍増殖曲線を比較したが、両群間に有意差を認めなかった。 アゼラスチンによって実験的急性放射線皮膚炎は抑制され、照射後投与の有用性も示唆された。更に、放射線の抗腫瘍効果に対する修飾作用は認められなかった。アゼラスチンはヒスタミン遊離阻害剤として、様々なアレルギー性疾患に対して臨床的応用されているが、放射線治療に伴う急性放射線皮膚炎に対しても有用である。
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