研究概要 |
これまで、我々は、生物毒素であるジョロウグモ毒素(JSTX)のアナログである1-NA-Spmが、AMPA型受容体作動薬によるけいれん発作を抑制し、さらにキンドリング完成後のけいれん発作においても用量依存的に抑制することを見いだし、報告した(Takazawa、Brain Research,1996)。本年度はさらに、1-NA-Spmのけいれん抑制機序について検討をするために、AMPA型受容体の脱感作を阻害することによって同作動薬の作用増強を示すアニラセタムとサイクロサイアザイドを用いて検討を行った(我々は、この2種の薬剤の作用機序に違いがあり、アニラセタムにはAMPA型受容体作用増強とならんで代謝型受容体に関連する細胞保護作用があることを見いだした)。雄性Wistar系ラットの右側脳室に、カニューレを刺入し、頭蓋骨に固定し、薬物注入経路とし、[サイクロサイアザイドあるいはvehicle]・[1-NA-Spmあるいはvehicle]・[AMPAあるいはvehicle]の順で投与した。アニラセタムは経口投与とした。サイクロサイアザイド、アニラセタムともにAMPAの誘発するけいれん発作を増強したが、1-NA-Spmはそれらを有意に抑制し、サイクロサイアザイドとAMPAの組み合わせ投与例におけるけいれん発作後の死亡率も有意に低下させた。これらから、1-NA-Spmは、AMPA型受容体の拮抗薬として同受容体の関連するけいれん発作を抑制し、かつ同受容体の脱感作の阻害作用を有する薬物の作用にも拮抗すること、さらにAMPA型受容体の脱感作によって生じた細胞毒性に帰因すると考えられるけいれん発作後の死亡についても抑制する事が示された。これらの結果は、1997年に米国で行われる神経科学会において発表予定である。
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