未服薬精神分裂病患者を対象に、赤血球膜リン脂質クラス組成、分子種組成をそれぞれ、薄層クロマトグラフィー(TLC)法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いて分析し、正常対照群との比較検討を行っている。現在のところ、以下のような傾向をみいだしている。 1、赤血球膜リン脂質クラス組成で、有意にホスファチジルコリン(PC)組成比の低下(p<0.05)、スフィンゴミエリン(SM)組成比の増加(p<0.01)がみられる。 2、ジアシル型PCの分子種組成で、リノール酸(18:2)を含む分子種(16:0/18:2、18:1/18:2)の有意の低下(p<0.001)、不飽和脂肪酸を含まない分子種(16:0/16:0、16:0/18:0)の有意の増加(p<0.001)がみられる。 3、PC組成比と不飽和脂肪酸を含む分子種組成比との間に正の相関傾向を、不飽和脂肪酸を含まない分子種組成比との間に負の相関傾向がみられる。 例数を増やしている段階ではあるが、以上のような変化は、赤血球膜の動的構造に変化を与え、膜の流動性の低下、変形能の低下などをきたすと考えられる。 また現在、実験の精度を向上させるため、リン脂質クラス分析、分取、サブクラス分析、分取をHPLC法で行う技術を開発し、実験方法の改善に着手している。臨床亜型、症状との関連については、例数の増加に伴い徐々に検討をくわえている段階にある。
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