予備的実験としてミンク肺細胞CCL64の細胞数とMTTの関係を調べた。5x10^4以上で細胞数の対数とMTTの値がほぼ直線状に対応することを認めた。CCL64にTGFβ存在下で10%FCSを処理して、処理前と処理後24時間でMTTを測定した。FCSによるMTT上昇がTGFβの容量依存性に抑制されることを確認した。我々はすでに、Gαi2のC端付近、Asp^<338>からCys^<352>までの15残基ペプチド(Gi2α-338-352)が自身のGαに働いて、基礎レベルまでGDP/GTP交換反応を抑制するGDI(GDP dissociation inhibitor)であることを証明した。すべてのGaにこの配列に類似したものが存在しており、各々のGαのGDIとして働くと推定される。そこで我々は各3量体G蛋白のGi2α-338-352に相当するペプチドを合成した。各ペプチドをCCL64に処理してTGFβの効果を調べた。Go1αの場合にはTGFβの有無によらず、CCL64の10%FCSによる増殖を抑制することが明らかとなった。再現性をもってTGFβの作用を抑制するペプチドを同定することはできなかった。問題点としてはまず第1に、実際にペプチドが細胞内に入っていることを確認していないことが挙げられる。これはたとえばGi2α-338-352に対する抗体をすでに得ているので、これを用いて実際に細胞のホモジェネートに対してイムノブロットを行い確認することが可能である。実際に細胞内に入っていても十分な濃度が得られていない可能性も考えられる。ペプチド処理とFCSによる刺激とを同時に行ったことも問題点として挙げられる。やはりペプチド処理後の時間経過と細胞内でのペプチド濃度との関係を明らかし、ペプチド処理時間を決定すべきであったといえる。
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