研究概要 |
本研究では、TSHレセプターcDNAのクローニング以後行ってきたTSHレセプターペプチドを用いた方法により、TSHレセプター機能調節機構におけるリガンドあるいは自己抗体のimmunogenic regionの解析を行い、とくに実験的甲状腺機能亢進症の作成の可否について検討を加えた。TSHレセプターの特異的領域ともいえるセグメントがN末端近傍に8アミノ酸、細胞膜貫通領域近傍に約50アミノ酸存在したが、特異的セグメントを含むN端側、アミノ酸残基J1-51: TQTLKLIETHLRTIPSH, 52-69: AFSNLPNISRIYVSIDLT, 61-78: RIYVSIDLTLQLESHSFを合成、家兎に免疫しそれぞれ抗体を得た。これら免疫家兎抗体からIgGを抽出し、TSHレセプター抗体活性を検討したところ、ほとんどすべてのIgGに151-439%のTSAb活性が観察された。これらペプチド免疫家兎の血中甲状腺ホルモン値を調べた。コントロールとしてペプチド非免疫家兎を用いた。TSAb活性の高い兎に高T3,T4血症が出現する傾向がみられた。これらペプチド免疫家兎に甲状腺機能亢進症を生じていることが推測された。つぎにこれら抗体IgGをddYマウスに注射した。この際のコントロールとしてはbTSHおよびTSAb陰性非免疫家兎IgGを用いた。bTSH注射によりマウス血中T3,T4は用量依存性に上昇した。TSAb陰性IgGでは不変であった。抗体IgGの注射により血中T3,T4は有意の上昇を示した。バセドウ病では刺激性にTSHレセプター自己抗体が産生され、これにより甲状腺機能亢進症が生じるとするならば、今回のこの成績はこれを実験的に再現したことになり、バセドウ病のモデルを作成したとも示唆された。
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