糸球体上皮細胞が、ストレスに対しどのように反応するのかを理解するため、その第一段階として糸球体上皮細胞の特性を示す物質を検討した。 (1)細胞間接着装置:degenerate primerを用いたPT-PCRにより、現在までR-カドヘリン、プロカドヘリンが発現していることがわかった。特にR-カドヘリンは、未熟な糸球体上皮細胞にのみ発現が観察され、糸球体発生において糸球体上皮細胞が分離独立することに深く関わっている可能性が考えられた。 細胞骨格:各細胞骨格成分、及びこれらと細胞膜裏うち蛋白を結び付けるプレクチンが、糸球体上皮細胞では核周囲に強染されるという他の細胞では見られない特異な分布を呈していることが見い出された。また、中間径フィラメントのビメンチンは、糸球体上皮細胞に極端に多く発現しており、その発現量は、発生発達上、糸球体ろ過が増大する時期に一致して増大すること、及び比較系統学的に見て、糸球体ろ過の多い鳥類、哺乳類にのみ非常に多いことが分かってきた。 新たな特異的蛋白質:糸球体の遺伝子ライブラリーとRNase protection assayを組み合わせた方法により、糸球体に特異的に存在する物質としてオルファクトメディン関連蛋白質、チモシンb4等既知のものが9種、未だ報告のないものが2種類見つかってきている。 今後は、ストレスのかかる条件下でこれらの物質がどのように変化してゆくかを探っていきたい。
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