現在まで検討した担癌患者は乳癌9例、食道癌30例であり、全例腫瘍細胞の腫瘍組織適合抗原のクラス1(フローサイトメトリーで検索)は陽性であったが、HLA-A1陽性患者はなかった。乳癌患者でのMAGE遺伝子発現はMAGE-1陽性例(10%)、MAGE-3陽性3例(30%)両者とも陽性1例(10%)、食道癌患者ではMAGE-1陽性7例(23%)、MAGE-3陽性14例(47%)両者とも陽性3例(10%)であった。患者の予後との関連においては、単独では有意ではないが、MAGE-1&-3遺伝子両者を発現するものは有意に予後は良好であった。MAGE-3遺伝子の発現頻度が高いことより、MAGE-3由来ペプタイド(EVDPIGHLY for HLA-A1 & FLWGPRALV. for HLA-A2)の合成を行ったが、現在まで検討した健常人、担癌患者ともにHLA-A1陽性患者の出現はなく、まず超音波破砕腫瘍抽出抗原を用いた動物実験とヒト末梢血リンパ球からの自己腫瘍特異的なポピュレーションの誘導実験を行った。その結果マウス基礎実験(Balb/cマウス)では、2種類の同系腫瘍(MOPC104E & MethA)を用いて、脾細胞から誘導した培養APC(GM-CSF 2000U/ml)を腫瘍抽出抗原でパルスし、腹腔内投与したのち静脈内投与することにより、腫瘍特異的なprotective immunityの誘導が可能であった。ヒト末梢血リンパ球から誘導された培養APCは以前に報告した表面マーカーに加え、CD14弱陽性でCD33強陽性の樹状細胞を示すものであった。さらにかかるAPCに腫瘍抽出抗原をパルスし、末梢血リンパ球の非付着分画を混合培養することにより、抽出抗原特異的に増殖し、自己の腫瘍のみに強い細胞障害活性を示すエフェクターの誘導が可能であった。
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