目的:我々は乳癌の骨転移の機序を明らかにするために現在以下の検討を進めている。 材料および方法:まず当科で培養中の乳癌細胞株MCF-7、BT-20を用い、乳癌細胞培養に伴い培地中に発現するメディエータの骨に対する影響を検討するためにラットの大腿骨を採取し、これら乳癌細胞株と混合培養することにより培地中のイオン化カルシウムの変動について検討した。さらに自家骨骨髄移植を行った患者の骨髄採取時の採取液から骨芽細胞系の培養を試みた。さらに現在骨芽細胞および破骨細胞の樹立培養株の使用を検討中であり、近日中にヒト骨芽細胞MG63を入手予定である。 結果:乳癌細胞との混合培養により、培地中のCaイオンを検討した結果、骨を加えない培養系から得られた培地中のCaイオンの値との間に有意差は認められなかった。さらに2例の骨髄採取患者の濾過ガ-ゼに濾し取られた骨片を含む材料から細胞の培養を試みたが、細胞のprimarycultureには成功しなかった。 今後の予定:今後、現在購入予定のMG63を用い骨芽細胞の増殖およびmediaterを介した骨組織への作用について再度実験系を検討中であり、その混合培養により培地中のCaイオンの推移や、骨を同時に培地中に混入した場合にどの様な影響を骨に与えるか、さらにその際に発生する蛋白の発現について、予想される物質(I16など)の検討を行う予定である。
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