研究成果 目的:乳癌骨転移の機序を明らかにするために乳癌細胞と骨細胞群との相互作用について検討した。 材料および方法:当科で継代培養中のMCF-7、ZR-75、BT-20を用いて、乳癌細胞培養に伴い培地中に発現するメディエーターの骨に対する影響を検討した。骨に対する影響はラットの大腿骨を採取し、乳癌細胞株と混合培養することにより培地中のイオン化カルシウム値の変動について検討した。さらに自家骨髄移植を行った患者の骨髄採取時の採取液から骨芽細胞系の培養を行った。 乳癌細胞株におけるTamoxifen等骨転移関連の諸因子によって誘導されるapoptosisとbcl-2の誘導およびにbcl-2やp53の過剰発現についても検討した。 結果:1)ヒト乳癌細胞と骨の混合培養により、培地中のカルシウムイオンを検討した結果、controlである骨を加えない培養系から得られたCondition medium中のカルシウムイオンの値との間には有意差は認められなかった。 2)骨髄内細胞培養に関しては、剖検時の骨髄細胞および骨髄採取患者の濾過ガーゼから得られた骨片を含む材料から細胞の培養を試みたが、安定した継代が不可能であった。 3)乳癌細胞株(MCF7、ZR75および当科樹立株KK)においてTamoxifenによって誘導されるapoptosisやbcl-2発現の抑制が認められた。 4)bcl-2やp53の過剰発現は乳癌の癌化や骨転移等の進展に関与していることがわかった。 以上より、乳癌培養細胞株から骨転移形成に関わる知見は充分には得られなかったが、乳癌培養細胞株においてはtamoxifenによってアポトーシスが誘導されていることはわかった.
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