研究概要 |
血清、胆汁、膵液中の遷移金属イオン(Cu^<2+>,Zn^<2+>,Mg^<2+>,Mn^<2+>,Ca^<2+>,Fe^<3+>,Co^<2+>,Ni^<2+>)の抽出法については、過塩素酸による処置と限外濾過法を開発したが、後者が最も簡便で確実であることが判明し(回収率95%以上)、それ以降は全例限外濾過法を用いた。すなわち血清および膵液は1mlを蒸留水で2倍に希釈、胆汁は0.5mlを5倍に希釈し、前述の限外濾過法にて抽出し、各20μlをHPLCシステムに注入した。電気伝導度検出器および分離カラムは島津製作所のCDD-6AとIC-C3を用い、溶離液は1.2mMショウ酸2水和物を利用し、流量を1.2ml/minとし、恒温槽は45℃の条件で測定を行う方法が最も分離が安定してることがわかった。各イオンの検量線にはすべてのイオンに関してr=0.996以上と極めて良好な結果を得た。また各イオンの添加回収率についてもすべて90%以上と満足すべき感度であることがわかった。 臨床応用の面では、Znは健常人の血清ではICP測定による総Zn濃度は108±16μg/dlであるが、Zn^<2+>濃度は3.8±2.6μg/dlであり、イオン化率は3〜5%であった。胆汁中では総Zn濃度は26.3±8.9μg/dlと血清より低値であったが、イオン濃度は8.9±3.6μg/dlと逆に血清より高く、イオン化率は30%を越えること、膵液中では総Zn濃度は350±102μg/dlであるが、Zn^<2+>は9.2±4.2μg/dlと胆汁と同様であり、イオン化率は血清と同じ3〜5%であることが判明した。Cu^<2+>,Mn^<2+>,Ca^<2+>,Fe^<3+>についても同様に体内動態分布を明らかにしつつある。 さらに、今回のシステムでは遷移金属イオンのみならず、NH^<4+>の測定も可能であるので、肝機能障害例で血清NH^<4+>の迅速測定法として応用可能であり、ICGK値とよく相関することを明らかにした。
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