ラットの肝細胞移植の方法の確立を試みた。肝細胞移植の移植床を作る為にコラーゲンスポンジをラットの腸管膜の間に埋め込み、更に他のラットから肝細胞を注入法で移植し、局所と全身の反応を観察した。 門脈後大静脈吻合や部分肝切除等の肝細胞増殖刺激が無い状態では、移植された肝細胞は1週間以内に70〜95%が失われ、移植を受けたラットの体重減少・腹膜炎が観察された。肝細胞の喪失は、移植後3日以内に多く、組織学的に、スポンジ内への炎症細胞の浸潤や、移植肝細胞の核濃染・細胞溶解像が観察され、移植肝細胞が多核白血球等の炎症細胞に因って障害されたり、肝細胞の着床障害、肝細胞がアポトーシスを起こしていることが示唆された。移植した肝細胞の長期維持が出来なければ、肝細胞移植による肝機能補助のメリットよりも、侵襲によるデメリットの方が大きいと考えられた。これに対して、免疫抑制剤(シクロスポリン)・好中球機能抑制剤(フコイジン)・抗活性酸素剤(アスコルビン酸・抗酵素剤)の有効性を検討している。
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