研究概要 |
1.A-V shunt loopと人工真皮を組み合わせて新しい皮弁(Artificial Matrix Flap)を作製した。この皮弁作製の機序として,「shunt loop血管からの血管新生・血管網の形成と人工真皮内へ遊走した筋線維芽細胞からの膠原線維の産生によって、人工真皮の吸収と器質化がおこりshuut loop血管を栄養血管とした新生肉芽組織が形成された」と考えられた。新生肉芽組織上への植皮は良好に生着し、skin grafted island flapとして用いることも可能であった。 2.(1)A-V Shunt loopと血管・組織新生:実験モデルの対照群は,chamberを用いた孤立系でA-V shunt loopと血管周囲のわずかな組織のみが本来の組織であることから、shunt形成による血流速度の増加が血管新生の重要な因子と考えられた。この実験モデルで、血管新生と組織新生とが得られたことは、血管新生のメカニズムを研究する上での理想的な実験モデルを提供したといえる。また、今回の実験で、動脈と静脈の2本の移植血管を用いてshunt loopを作製したところ、静脈側を中心に新生組織と血管新生とが得られた。これは、相対的なshear stressが静脈側に大きく作用するためと思われる。また静脈壁の薄さも血管新生の再構築に有利に働いたものと思われた。 (2)bFGFの併用効果:bFGFの併用によって組織新生が促進され、その組織の線維化および人工真皮の器質化も促進された。即ち、bFGFの併用でより大きなprefabricated flapがより短期間に作製できる可能性が示された。一方、bFGFで新生された組織は、bFGFの消退とともに縮小ることも示された。この原因はアポトシスあるいは「組織の線維化に伴う膠原線維の収縮」等が考えられるが、新生組織の線維方法などとともに今後の検討を要する。将来的には他の成長因子の併用で骨や軟骨組織を含んだ複合組織皮弁を作製することも可能になると思われる。
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