研究概要 |
胆管癌に対する新しい免疫療法を確立するために、Bespecific抗体(BsAb)を用いて腫瘍特異性の高い治療法開発し、臨床に応用すべくin vitro、およびin vivoにおいて基礎的研究を施行した。BsAbは、NUC1に対する抗体(MUSE11)と抗CD3抗体(MUC1×CD3 BsAb)あるいは抗CD2抗体(MUC1×CD2 BsAb)および、抗CD28抗体(MUC1×CD28 BsAb)から化学的合成法により作製した。LAK細胞は、末梢血リンパ球を抗CD3抗体及びIL-2にて48時間培養後IL-2で培養しアッセイに用いた。IL-12誘導のLAK細胞は末梢血リンパ球をIL-2とIL-12により誘導した。標的細胞は胆管癌細胞株TFK-1,OCUCh-LM1,HuCC-T1を用い、コントロール群としてMUSE11と反応しない肝細胞癌株(HT-17)を用いた。in vivoの治療モデルは、SCIDマウス背部に胆管癌細胞株を移植後10日より4日連続で尾静脈よりBsAbにて感作したLAK細胞を静注することにより施行した。作製した3つのBsAbとも分子量約100kDaであり、FACSにて、それぞれ2つの抗原決定基を同時に認識する構成抗体であることを確認した。細胞障害活性は、MUC1×CD3 BsAb 0.5μg/mlにてプラトーに達した。TFK-1に対しMUC1×CD3 BsAb 0.5μg/ml添加群にてE/T ratio5で59%の細胞障害性を示し、無添加群を比較して有意に細胞障害活性の増強が認められた。さらにMUC1×CD2 BsAbを添加することにより、MUC1×CD3 BsAb単独より約10%の細胞障害活性の増強があり、BsAb2種併用により細胞障害活性が増強したと考えられた。一方、IL-12誘導LAKを用いての細胞障害活性は、IL-12誘導LAK単独にても約50%、さらにMUC1×CD3 BsAbを添加すると78%もの細胞障害性を認め、高い抗腫瘍性を発揮した。胆管癌移植SCIDマウスモデルにおいては、MUC1×CD3 BsAbとMUC1×CD28 BsAbの併用時において腫瘍増殖抑制効果を認め、臨床応用に期待できる結果であった。
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