研究概要 |
胃癌66例・大腸癌100例・乳癌130例の手術切除材料を用いて腫瘍のテロメア長(TRF長)、テロメラ-セ活性を検討した。 1、胃癌:66例中56例(85%)がテロメラーゼ活性を有しており、テロメア長の短縮、過長14例、及びf核DNA量の測定でAneuploidyの22例は全例テロメラーゼ活性を有していた。活性のない10例中8例が早期胃癌症例で活性のある腫瘍は有意に予後不良であった。 2.乳癌:130例中120例(92%)にテロメラーゼ活性を認め、活性のない腫瘍10例中8例が20mm以下、7例が病期Iで、テロメラーゼ活性は進行例では殆ど認められた。テロメア長異常例は全例テロメラーゼ活性を有していた。 3.大腸癌:100例中94例(94%)が陽性で、病期とは特に有意の相関は無かったが、テロメア異常例は全例テロメラーゼ活性を有していた。 また、再発、転移腫瘍を10例検討したが全例テロメラーゼ活性は高活性であり、retrospectiveに原発腫瘍を検討すると高活性の腫瘍が多かった。p53遺伝子およびK-ras遺伝子のmutationの有無や、repetitive sequence(CA repeats, VNTR)を用いたLoss of heterozygosity(LOH)、repetitive errorは現在検討中であるが、これらの異常症例にテロメラーゼ活性が高い傾向にある。 以上から、テロメラーゼ活性は癌の進展とともに獲得されテロメア長を安定化することで不死化を獲得するものと推察され、テロメラーゼ高活性腫瘍は再発、転移に留意した手術術式、術後の治療が必要と考えられた。
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