研究概要 |
近年、小腸虚血・再潅流に伴う肺障害に関する研究が進み、サイトカインなどの炎症性メディエイタ-により、好中球が肺に集積し、障害を起こすと考えられている。しかし、その系統的メカニズムは未だ明らかでない。また、炎症局所において、サイトカインは血液中の数百倍存在すると言われ、局所のサイトカインも多臓器障害に大きく関わっていると考えらるが、局所サイトカインの多臓器障害への影響を検討した報告はない。そこで、腹腔内のサイトカインをブロックする事により肺障害が抑制されるか否かを検討した。 実験1 まず、小腸虚血・再潅流後に肺を摘出し組織学的に検討した。 結果 虚血時間が長いほど、再潅流時間時間が長いほど好中球集積が増強し、肺浮腫の増強を認めた。 実験2 以上の結果を元に、局所(腹腔内)サイトカインの肺障害への影響を検討する目的で実験を行った。 実験群 【encircled1】単開腹270分(sham)【encircled2】虚血90分・再潅流180分(I/R)【encircled3】虚血90分・再潅流180分さらに局所サイトカインを腸バックにてブロックした群(腸バック) 測定項目 (1)lung permiability(Evans Blue)⇒肺浮腫の指標 (2)サイトカイン(IL-1β,TNFα);各群経過終了時の血漿 結果 (1)lung permiability:I/Rでshamに比し有意に上昇、腸バックでI/Rに比し有意に軽減 (2)IL-1β:I/Rでshamに比し有意に高値、腸バックでI/Rに比し有意に低値 TNFα:各群間に差を認めず また、腸バック内腹水のIL-1β、TNFαは腸バック血漿中の約3倍程度であった。 以上から、腹腔内のサイトカインが肺障害を助長している可能性が示唆された。なお、サイトカインの測定はさらに、経時的な測定が必要と考えている。
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