研究概要 |
成犬を用いて、顔面神経本幹を切断し顔面神経モデルとした。先ずA群として、左側は縦二分割舌下神経顔面神経吻合術を行い、右側は顔面神経野切断のみを施行した。またB群として、左側に舌下神経顔面神経吻合術(舌下神経は全切断)を行い、右側は顔面神経切断した群とした。その後、経時的実験犬の表情の回復過程の観察、回復後の誘発筋電図の記録、神経線維の組織学的な観察を行った。 その結果、A群B群ともに術後約1か月目から顔面表情筋の収縮を認め、その収縮力はA群がB群に比べてやや劣る傾向があった。また,A群、B群共に食物摂取の折りの異常協同運動を認めたが、異常協同運動の程度はA群の方が軽度であった。舌萎縮については,A群の方が肉眼的にも病理組織学的にも軽度であった。 従って、舌下神経を縦二分割して、その一方を顔面神経麻痺の治療に用いることにより、舌の萎縮をある程度防止でき、また、顔面表情筋の収縮を得ることができることが確認された。しかし、舌下神経を用いることによる顔面表情筋の異常協同運動の出現は避けることができず、今後、当法を臨床応用する際に、この異常協同運動が解決すべき問題と考えられる。 なお、異常協同運動は、手の外科領域などでも問題となることがあるが、ヒトでは{学習}によって、その異常協同運動をある程度克服することができ、動物実験結果では問題となった今回の顔面表情筋の異常協同運動も臨床においてはある程度克服することができるのではないかと思われる。
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