一酸化窒素(以下NO)は神経伝達物質として注目されており脊髄後角においてもNO合成酵素が豊富に存在することより痛覚への関与が強く示唆されている。 本研究は細胞レベルにおいて痛覚伝達機序や伝達物質の薬理作用を解析できるin vitroの実験系であるラット後根付き脊髄スライス標本を用いてNOの痛覚伝達における役割を解明することを目的とした。 NO測定は自己作製による微小ガラス電極を用いた。後根AδおよびC線維刺激により脊髄後角で惹起されるNOの測定を試みた。NOの検出は可能であったが、その振幅は小さくノイズとの分別が困難となることがしばしばみられた。その原因としてNO電極の精度限界の問題、スライス標本におけるNO電極の位置の問題、さらに脊髄後角におけるNOの発生量が他の報告されている小脳、海馬に比べ微量であることなどが考えられた。 今後の課題として、NO電極の精度、分解能をさらに向上させること、後角においてNO合成酸素が特に浅層に多く存在することにより同部での測定を試みること、潅流によりNOが流出し測定の障害にならぬように記録用チェンバーを改良することなどが考えられた。 現在上記の問題点を検討、改善しつつ実験を続けている。
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