ヒト骨芽類似細胞HuO9は高いオステオカルシン産生能を持つヒト骨芽類似細胞として最近株化された細胞系である。この細胞の継代培養後7日から12日目で、細胞表面をコラゲネースで約15分処理することで良好なパッチ膜のシール抵抗(50-100Gオーム)と再現性のあるチャネル活性を得た。シングルチャネルパッチクランプ法により、膜電位感受性Caイオン感受性のある120-140pSのカリウムチャネルを検出同定し、細胞内イオン環境によるチャネル開口確率の変化とイオン選択性を決定した。このチャネルはセルアタッチの条件下ではパッチ膜に対するストレッチにやや遅れて反応性しチャネルの開口確率が上昇し、細胞外のBaイオンでブロックされる。インサイドアウトの条件下ではストレッチに対しての反応を示さず、細胞内Caイオン濃度の上昇と膜電位の脱分極によりその開口確率が上昇する。 一方、この細胞にはストレッチ感受性非選択性陽イオンチャネルが存在し60cm水柱程度のかなり高いストレッチで開口確率が上昇する。このチャネルのPNa/PKはほぼ1に近く、2価イオンであるCaイオンも通過すると考えられる。 これらの結果から、ストレッチ感受性非選択性陽イオンチャネルが細胞内にCaを流入することで、カリウムチャネルの活性と細胞内イオン環境の変化が起こることが示唆され、ストレッチというメカニカルな刺激に対する細胞の応答がいかにして起こるかという疑問に対して1つの可能性ある仮説を示すことができた。
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